世界はクソで、日本はクソで、私もクソで、

海外を放浪しながら生活していると羨ましいとか凄いなどとよく言われるけど、生活をするのはどこにいようと大変だしクソだ。生きるのはめんどくさい。

興味がなくても、せっかく違う国にきたのだから観光地に行かなくてはもったいないみたいな義務感はもっとめんどくさい。

けだるい日でも食べなくては死ぬので、パン屋さんで並んでいると後から来た人に普通に抜かされた。タクシーにのるといつもの倍を請求されてぼったくられた。日本の夫婦別姓は何十年も変わらないのに、共同親権は２、3日で可決された。

人間はなんてめんどくさくて、なんてクソなのか。

そんな世界でも私が人生に絶望しないで平気で生きていけるのは、世の中は基本クソだと思っているからだ。だから、嫌な出来事があっても一瞬キレるが３０分後には忘れている。後を引かない。はなから期待してないから「やっぱクソですね〜」と思うだけだ。

性善説、性悪説なんてそんなのことはどっちでもいい。
人生に絶望しないこと、それが生きていくために一番重要だから。


クソが前提だと人間に期待しないから、たまに出会う善意や優しさや奇跡に心を揺さぶられる。心から感謝することができる。

少しでも嫌なことがあったり他人に嫌な対応をされて、人生の終わりかのようにショックを受けて傷つく人がいるが、それは自分を含めた人間に多大な期待しすぎているからだ。自分は大切に扱われて然るべき人間だという前提があって、その高いプライドが傷つくからだ。そういう人間は善意や他人の優しさにも感謝ができない。

人間は自分も含めてクソだ。

海外で何万人と虐殺されていようと、自分の国で差別が平然と行われていようと、今日も普通に日常を過ごしている。クソ以外のなにものでもない。そんな自分を棚に上げて他人に期待するなんて、あなたは神様かなにかですか、と。

世界はクソで、日本はクソで、人間はクソで、私もクソで、あなたはクソだ。

たまに気が向いて、近所を散歩したり、近くのビーチでぼーっとする。そういう時間に幸せを感じる。なんとなく勝手に体が動くような、そこに呼ばれているようなそんな時に、ふらっと出かけていくと思いがけない感動に出会う時がよくある。

散歩中、近所に住んでいる小さな兄妹に話しかけられ、遊んだ。何を言っているのか私はなにも理解できないのに、家に招待してくれた。小さな赤ちゃんが、私の目を真っすぐ見て近づいてきてくれた。全力で高い高いをしたら、満面の笑みで笑ってくれた。

帰り際に、家のお父さんが揚げたてのエンパナーダをくれた。とてもおいしかった。お姉ちゃんがなにかを一生懸命言っていただけど、外ではネットが繋がらないので翻訳ができなかった。帰って翻訳機にかけたら、

「あなたの名前はなんですか？」

「明日、午後２時にまた遊びにきてください」

・・なんでこんな簡単なスペイン語も覚えていなかったのかと自分を叱った。次の日、遊びにいこうかと悩んだがすこし小っ恥ずかしくて買い出しに出かけた。この島を出るまでに、彼女たちに使っていなかった新品のペンとゴッホの絵が描いてある手鏡をあげようとバックパックに入れた。日本製品はクオリティーだけはいいからきっと喜んでくれる。

昨日、『虎に翼』の続きを観ようとNHK＋を開いたら、視聴の途中で配信終了してしまった『坂本龍一 LAST DAYS』が再放送していた。最後まで観れた。教授の最後を見れた。

ビーチに出かけた。見たことのない鮮やかな色の魚を見た。ウミガメの孵化に遭遇した。

5000匹に一匹しか生き残れないと言われる小さな小さな100匹のウミガメたちが、死ぬ確率の方が圧倒的に高い広大な海へ懸命に這っていく姿を見た。何かに突き動かされるように、恐ることなく必死に必死に地獄の世界へ向かっていく。

その姿は悲しげなものは一切なく、強い生命力に満ち溢れていてどこか好奇心に心を躍らせているようにも見えた。

こんな奇跡のような瞬間がたまに、ごく稀に訪れる。

クソみたいな世界で、めんどくさい日々を生きてきて良かったと思った。

今日も世界は安定にクソです。

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