あなたにはなんの価値もない。だから自由だ。

人は自由なものとして生まれたのに、いたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思い込んでいる人も、じつはその人々よりもさらに奴隷なのである。
阪本明日香 2026.10.23
誰でも

先日まで避暑や休息も兼ねて山にこもっていて、ネットやSNSからしばらく離れていた。コンビニも何もない村に滞在していたので、車の運転が上手になった。

下山し、東京などちょこちょこ都会に出るようになって最近はまたSNSやニュースをよく見るようになった。ここ最近のニュースでもっとも強く印象に残ったのは、フランスやヨーロッパ全域のデモとICCの騒動だ。どちらも腐った権力に抗う構図で、胸を打たれた。


フランスといえば、最近評判のいいドラマ『ポリティカルパン』でルソーの言葉が引用されていた。

人は自由なものとして生まれたのに、いたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思い込んでいる人も、じつはその人々よりもさらに奴隷なのである。

『社会契約論』

この文言と主旨は、フランス革命のスローガンとなり、1779年のジェファーソンのアメリカ独立宣言にも、1789年のフランス人権宣言にも採り入れられた。

ドラマも「政府の腐った金を盗む大泥棒」という腐った権力に抗うストーリー設定で、政治に興味関心がない人にもメッセージ性や政治の知識を与えるこのドラマは、平和ボケして搾取され続ける日本人の目を覚ますような内容だ。滅多に日本のドラマを観ない私からしてもとても面白くおすすめしたい。

とくにドラマの中に出てくる士郎さんという登場人物がお気に入りで、腐った政党の中にいながらも腐らないように呻いている姿が印象的で、可愛さもありながら何にも侵されない芯があり心を打たれる。


植物は腐った仲間から離れて育ち、その腐った果実は朽ちて肥料になる。人間はそうはいかない。次世代のために肥料にはならないし、腐っているかどうかもわからない人たちばかりだ。

ただ人間は植物と違って腐っても人間であり、適切な肥料と環境と水があれば朽ちることなく腐った部分を戻すこともできる。


肥料とは日頃取り入れている情報や知識や教養、音楽やアートなどのセンス。そして人との交流や遊び。環境とは、職場や人間関係や住まい、地域や社会。水とは身体に取り入れる食事や睡眠、習慣、生活そのものと言える。

そして人間は植物と違って、勝手に腐ることはない。ルソーが言うように、いたるところで鎖につながれているからだ。

あなたは鎖につながれていないだろうか。腐っていないだろうか。

腐っていることに気づけるだろうか。鎖を外すことができるだろうか。


先ほど、村上龍さんが亡くなったことを知った。私自身彼の言葉に多大なる影響を受け、信じ、生きてきた。明らかに彼がいたから腐らないで生きてこれたと思っているし、アイデンティティの重要な要素を占めている。とても寂しい。嘘や演出がなく言葉を選ばない、率直で明け透けなエッセイが大好きだった。

最後に、鎖につながれ腐っているかもしれない人のために、村上龍の言葉を贈りたいと思う。


ご冥福をお祈りします。

不幸な環境は人間を強くするというのは嘘だ

村上龍

楽しく生きるためにはエネルギーがいる。戦いである。わたしはその戦いを今も続けている。退屈な連中に自分の笑い声を聞かせてやるための戦いは死ぬまで終わることがないだろう。

村上龍

例えば、リオの貧しい若者達は老後に幻想などを抱いていない。(中略)極端な話、オートバイに乗る時もヘルメットなどしない。転倒して死なないという安心感よりも、風を受ける際の快感を優先させるわけだ。これは好みの問題で、どちらが正しいといえる話ではないが、どうひいき目に見てもリオの方がすがすがしく、わかりやすい。

村上龍

あなたにはなんの価値もない。救いもない。希望もない。だから自由だ。

村上龍



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