テレパシーという不幸
私は今タイのバンコクにいる。いつか行ってみたいと思っていた国でもあるので、やっと来れたというちょっとした感慨がある。が、やはりバンコクは都会。とても日本に近いものを感じる。たまたま行った美容室は日本人経営だったし、街を見渡せばそこらじゅうに日本語を見つけることができる。
いい意味で拍子抜けしている。
私は日本があまり好きな方ではないけれど、ここで日本を感じるのはあまり悪い気がしない。日本人も頑張って海外に挑んでいるんだなという努力がうかがえるからだ。ちょっと勇気がでる。
タイに来て早々私は熱で寝込んでいた。6月に入ってから調子は悪かったとはいえ、ここまで体調を崩したのは4、5年ぶりくらいなので少し焦った。「このまま誰にも知られぬままに異国の地で死んでしまうのではないか・・」なんて考えるくらいには滅入っていた。
だけどだいたいそういうのは杞憂におわる。3日目になっても回復しないので宿のオーナーにタイの病院を紹介してもらおうと連絡をしたら、薬からなにからいろんなお世話をしてくれた。やさしい。
すると一気に安心したのか体調もみるみるよくなった。人は人の気遣いを受けると元気になる。
回復していくにつれてすこし不思議なことが起こった。
私のいる宿はいわゆるゲストハウスで、いろんな外国人が泊まっている。バスルームやキッチンなどは共有でよく他の宿泊者とも出くわす。旅には慣れているのでこういう場所での交流もそれなりにこなしてきたつもりだけど、熱で寝込む来たばかり頃はなぜか誰一人わたしの目を見ようとしない。
通りすがり際にこちらが「Hi」と挨拶をしたらたまに返してくる人がいるか、無視されるか、そんなレベルでみんな愛想がない。なんだこいつらは、、と内心ムカついていたが、バンコクというあまりに人の出入りの多い観光地ではそういうものなのか?とも思っていた。
(NYの友達に「みんな私を無視するんだ」と相談していたくらい。笑)
だけど今日、ほぼ私の体調も回復し元気になってくると、まるで封を切ったかのようにいろんな人に話しかけられた。3人と連絡先を交換し、一人とは今夜一緒にクラブにいく約束までした。
私に背後霊でもついてたんかいと言わんばかりの周囲の変わりよう。風邪は体のデトックスという言われ方もするからあながちバカにできない。
前置きが長くなってしまった。ところでなぜ私は今回タイに来たのかというと、いつも理由はとくにない。けれど、あえて言うなら「生活」と「遊び」のため。日本の閉鎖的な空間はやはり私の肌には合わず、時たま息継ぎをするように外に出ないと気がふれそうになるから。
好きで派手な髪色ををしていても周囲に気を遣って帽子をかぶる必要がない。カジュアルで露出の高い服を着ていても男の変な目を気にする必要がない。声をかけられても察したり相手の心を読む必要がない。
それだけで深く呼吸することができて、脳に栄養が行き渡る。
最近知り合った旅人の外国人は以前日本に長いこといたらしく「日本はとても不思議だ。なぜか僕は知っている感じがして、安心した。ずっとそこにいたくなる。どうして君は日本を離れたのか気になる。」と言っていた。
まあ、そうでしょうとも、という感想だった。なぜなら彼は日本で生まれたわけじゃないから。不快な事は感じないでいられる。日本で生まれ育った人と外国人では当たり前だが圧倒的に「感じる力」が違う。